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聖歌と讃美歌の違いとは?キリスト教葬儀で歌われる歌の意味と役割
2025年9月19日
キリスト教の葬儀に参列すると、多くの場合「聖歌」や「讃美歌」が歌われます。厳かな旋律に包まれると、信者でなくても心が静まり、祈りの雰囲気を感じることができるでしょう。しかし「聖歌と讃美歌は同じではないの?」「どんな意味を持って歌われているの?」と疑問に思う方も少なくありません。
本記事では、聖歌と讃美歌の違いや、葬儀で歌われる理由、代表的な曲の例をわかりやすく解説します。初めてキリスト教葬儀に参列される方でも安心できるよう、知っておきたいポイントをまとめました。
目次
聖歌と讃美歌の違い
「聖歌」と「讃美歌」は似たように使われる言葉ですが、実は背景や使われ方に違いがあります。一般的に「聖歌」はカトリック教会で用いられる伝統的な教会音楽を指し、「讃美歌」はプロテスタント教会で歌われる信仰の歌を意味します。どちらも神を賛美し、祈りの気持ちを表す音楽ですが、成り立ちや曲調にはそれぞれ独自の特徴があるのです。葬儀の場では、信仰の伝統を表す大切な要素として歌われます。
聖歌とは?
聖歌は、古代から続くカトリックの典礼音楽に由来します。ラテン語やギリシャ語で歌われることが多く、単旋律で静かに歌い上げられるのが特徴です。代表的なものとしては「グレゴリオ聖歌」が挙げられ、長い歴史の中で世界中の教会で受け継がれてきました。
カトリックの葬儀では、故人の魂を神にゆだねる祈りとして聖歌が用いられます。その旋律は華やかさよりも厳かさを重視しており、聖堂全体を包み込むような静謐な響きが参列者の心を祈りへと導きます。聖歌は信者だけでなく、音楽文化としても高く評価されており、キリスト教芸術の象徴として世界的に知られています。
讃美歌とは?
讃美歌は、16世紀の宗教改革以降にプロテスタント教会で広まった信仰の歌です。ドイツのマルティン・ルターが人々に親しまれるメロディーで歌を広めたことがきっかけとされ、会衆全体が声を合わせられるよう、比較的わかりやすく歌いやすい旋律が特徴となっています。
地域や時代に応じて数多くの讃美歌が作られ、その多くは信者の日常の礼拝や行事、葬儀の場でも大切に歌い継がれてきました。特に葬儀においては「神への感謝」「故人の魂の安息を祈る」という意味を込めて歌われ、参列者の心をひとつにまとめる役割を果たします。
また、日本でも「いつくしみ深き」「主われを愛す」といった讃美歌は広く知られており、キリスト教徒でなくても耳にしたことのある人が多いでしょう。それだけに、葬儀の場で歌われると参列者の心に強い印象を残し、深い祈りの雰囲気を共有できるのです。
なぜ葬儀で聖歌や讃美歌を歌うのか
キリスト教葬儀で聖歌や讃美歌が歌われるのは、単に音楽的な演出ではありません。歌は祈りの延長であり、言葉だけでは表せない感情を神に捧げる手段とされています。旋律に心を委ねることで、悲しみや感謝、希望といった複雑な思いを祈りの形に変えることができるのです。歌声を通して故人を神にゆだね、参列者の心を慰め、また「死は終わりではなく神のもとでの新しい始まり」というキリスト教の希望を分かち合うことができます。
さらに、聖歌や讃美歌には「共同体として祈る」という意味があります。会衆全体で同じ旋律を声に出して歌うことで、悲しみの中にあっても一体感を覚え、遺族は孤独ではなく信仰の共同体に支えられていることを実感できます。これは、参列者全員にとっても「共に祈り、共に支える」という姿勢を確認する大切な時間となります。
音楽は言葉を超えて心に届く力を持っているため、葬儀における聖歌や讃美歌は、故人を偲ぶと同時に残された人々の心を癒し、前へ進む力を与えてくれる大切な役割を果たしているのです。
葬儀でよく歌われる聖歌・讃美歌の例
ここでは、日本のキリスト教葬儀でよく歌われる代表的な聖歌や讃美歌をご紹介します。信者でない方でも耳にしたことがある曲が多いため、参列の際に少しでも理解しておくと安心です。曲の背景や意味を知ることで、歌に込められた祈りの心をより深く感じ取ることができます。
- アヴェ・マリア: カトリック葬儀でよく歌われる祈りの歌。マリアへの賛歌であり、静けさの中に深い祈りが込められています。シューベルトやグノーによる楽曲は特に有名です。
- いつくしみ深き: プロテスタント葬儀で最も広く歌われる讃美歌。神の愛と慰めを表す歌で、多くの人に親しまれています。日本語訳詞は明治期から歌われ続けており、馴染み深い曲です。
- 主われを愛す: 子どもから大人まで広く歌われる讃美歌で、神の愛をシンプルに歌い上げます。葬儀の場では、純粋な信仰心を思い起こさせる曲として選ばれることがあります。
- アメイジング・グレイス: 世界的に有名な讃美歌で、葬儀の場でも感動的に歌われます。罪の赦しと救い、そして新しい人生への希望を象徴する歌です。
- 神ともにいまして: 英語の讃美歌「Abide with Me」の訳詞として広く歌われています。死や別れの悲しみの中でも、神が常に共におられるという慰めを表す歌で、日本のプロテスタント葬儀では特に定番の一曲です。
- ガリラヤの風かおる丘で: 日本の讃美歌の中でも人気の高い一曲。親しみやすいメロディーで、神の導きを表す歌詞が心を慰めます。
- 主よみもとに近づかん: 世界中で葬儀の定番曲とされる讃美歌。悲しみの中でも「神に近づく」という信仰を力強く歌い上げる旋律が特徴です。
- オンブラ・マイ・フ(なつかしい木陰よ): ヘンデル作曲の旋律を用いた歌で、厳密には讃美歌ではありませんが、静かな祈りを表す曲として葬儀でも演奏されることがあります。
このように、葬儀で歌われる聖歌や讃美歌には、それぞれの歴史的背景や信仰に根ざした意味が込められています。必ずしもすべての参列者が歌詞や旋律を知っている必要はありませんが、曲の存在意義を理解しておくと、葬儀の雰囲気や祈りの深さをより自然に感じ取ることができるでしょう。聖歌や讃美歌は、悲しみの中にあっても神の平安を思い起こさせ、参列者全員の心を一つにする大切な役割を果たしているのです。
キリスト教葬儀における聖歌・讃美歌の流れる場面
キリスト教葬儀は、教会での礼拝を基本とした流れで進行します。そのため、儀式の合間や重要な場面で聖歌や讃美歌が歌われるのが特徴です。ここでは、一般的な教会葬の進行と音楽の役割についてご紹介します。
まず、開式時には「入場の歌」として会衆が立ち上がり、聖歌や讃美歌を共に歌います。厳かな旋律の中で式が始まり、祈りの雰囲気が整えられます。続いて聖書朗読や祈祷の場面でも、一つの区切りとして歌が挟まれることがあります。例えば、聖書の言葉を受けて「神の平安」や「永遠の命」をテーマにした曲が歌われ、参列者全員が思いを共有できる時間となります。
説教や牧師・神父のメッセージの後には、故人を神にゆだねる祈りを込めた讃美歌が歌われます。ここで歌われる曲は特に印象深く、遺族に大きな慰めを与えるものです。
最後に、遺族や参列者全員で「閉式の歌」を歌い、式を締めくくるのが一般的な流れです。この時に歌う聖歌・讃美歌は、悲しみの中でも「神と共にある希望」を象徴する内容が選ばれることが多く、心に残る瞬間となります。
このように、聖歌や讃美歌は単なるBGMではなく、式全体の進行を支え、参列者の心を祈りへと導く重要な要素です。実際の教会葬では、それぞれの場面にふさわしい曲が用いられるため、参列者にとっても自然に信仰の雰囲気を感じ取れる時間となります。
参列者はどう対応すればよい?
初めてキリスト教葬儀に参列する方の中には「歌えないと失礼では?」と不安に思う方もいます。しかし、聖歌や讃美歌を知らなくても心配はいりません。参列者は会衆と一緒に静かに立ち、祈る気持ちで耳を傾けるだけでも十分です。無理に声を出さなくても、故人や遺族に対して敬意を示すことができます。
葬儀によっては讃美歌集や式次第が配布される場合があります。その際は、文字を目で追いながら雰囲気を感じ取るだけでも構いません。もし可能であれば、一緒に口ずさんでみると会衆の祈りに加わる体験ができ、より心が通じ合う時間になるでしょう。また、讃美歌は旋律が比較的シンプルに作られているものが多いため、初めての方でも繰り返すうちに自然と歌いやすくなります。
大切なのは「正しく歌うこと」ではなく「祈りの姿勢を持って参加すること」です。声を出さずとも、深く一礼して静かに耳を傾ける姿は十分に敬意を表しています。周囲の参列者の動作に合わせて立つ・座るといった動きを心がけるだけでも、その場に溶け込み、違和感なく参加できます。こうした配慮があることで、遺族にとっても安心感につながるでしょう。
聖歌と讃美歌に込められた意味
聖歌や讃美歌には「祈り」「慰め」「希望」という3つの大きな意味が込められています。悲しみの中にある遺族を神の言葉で励まし、故人の魂を安らかにゆだねることを表すものです。旋律を通じて信仰の深さが伝わり、参列者全体の心をひとつにし、厳粛な空間をより神聖なものとします。
特に聖歌は古くから典礼の一部として位置づけられており、神への賛美そのものとして歌われてきました。一方、讃美歌は会衆全員で声を合わせることに重きが置かれ、共同体としての祈りや支え合いを象徴しています。こうした音楽的要素には、単なる習慣を超えた「信仰告白」としての意味合いが含まれています。
また、葬儀で歌われる聖歌・讃美歌は、単に伝統を守るだけでなく、現代の人々にとっても「生きる希望」を与える役割を果たしています。悲しみの中にあっても「神は共におられる」という確信を旋律を通して感じ取れることは、遺族や参列者に大きな慰めとなります。その響きに触れることは、信者でなくても心を動かされる体験となり、人生や死について静かに思いを巡らせるきっかけにもなるでしょう。
まとめ
キリスト教葬儀における「聖歌」と「讃美歌」は、悲しみの場を祈りと希望に包み込む大切な役割を担っています。単なる音楽ではなく、故人を神にゆだね、残された人々の心を支える信仰の表現として受け継がれてきました。
参列する際に歌詞を知らなくても問題はありません。静かに耳を傾け、祈りの姿勢を持って式に参加することが、もっとも大切な礼儀となります。聖歌や讃美歌の響きに心を委ねれば、自然と祈りの輪に加わることができるでしょう。
当社では、キリスト教葬儀に精通した専任スタッフが、信仰に沿った進行やマナーに不安をお持ちの方を丁寧にサポートしています。初めての方でも安心して臨めるよう、心を込めてお手伝いしますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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